子どもの熱は下げない方がいいって本当? ―解熱剤のメリット・デメリット

子どもと病気

こんにちは。めぐです♪

「うちの子はすぐに熱をだします…これって大丈夫?」

子どもは大人とくらべて体温調節機能が未熟なため、ちょっとしたことですぐに高い熱がでます。
そうはわかっていても自分の子どもが熱を出すと、とても心配になってしまいますよね。

発熱を心配して病院にいくと、熱を下げるための”解熱剤”を処方されることが多いと思います。

ですが、新しい医学の考え方である「進化医学」では、「発熱は感染症を治すために起こるからだの防御反応のひとつ」であり、解熱剤で熱を強制的に下げてしまうことは、からだが本来もつ防御反応を妨げてしまうことになると考えられています。

今回は、発熱のしくみと解熱剤のメリット・デメリットについて、進化医学的な視点からお話しします。

なぜ熱がでるの?

最新の進化医学の考え方では、熱は「体温をあげ、病原菌やウイルスの力を弱めると同時に、からだの免疫の力を高めることで感染症を治すからだの治療メカニズム」であるとされています。

その根拠となるさまざまな実験や観察があります。

たとえば、トカゲは変温動物*であり、自分で体温を上げることができないため、体温を上げるには自分で暖かい場所に移動しなければなりません。

トカゲは感染症にかかると、自分の体温を2度くらい上げてくれるような暖かい場所に移動し、感染症を治すことがよく知られています。

*変温動物とは、自分で体温を安定的に保つことができず、外気温や水温などに体温が影響を受けやすい動物で、魚類、両生類、爬虫類などです。これに対し、私たち哺乳類や鳥類は恒温動物とよばれ、外気温が変化しても自分で体温を一定に保つことができます。

人間においても、梅毒という感染症の患者に、マラリアを故意に感染させて発熱させることで、梅毒の治癒率が劇的にあがったという研究成果で、ワーグナー・ヤウレックという医師が1927年にノーベル生理・医学賞を受賞しています。(現代では考えられない実験ですね。汗)

実際、感染症の原因となる細菌やウイルスは高温に弱く、人間のからだが38~39度の体温になると力が弱まります。
また、体温が上がるとからだの免疫細胞の活動も高まり、細菌やウイルスへの攻撃力が強くなります。

これらのメカニズムによって、発熱は感染症を治し、私たちのからだを守っています。

解熱剤をのむと病気が長引くことがある

発熱は感染症を治すために起こるからだの防御反応のひとつであるため、解熱剤で熱を強制的に下げてしまうことはからだが本来もつ防御反応を妨げてしまうことになります。

実際に、水ぼうそうにかかって発熱している子どもにアセトアミノフェンという解熱剤をのませると、解熱剤をのまなかった子どもより、治るまでに約1日長くかかったという研究結果があります。

別の研究では、56人のボランティアにかぜのウイルスを鼻腔にスプレーし、わざとかぜをひかせた後、被験者を2グループに分け、一方には解熱剤をのんでもらい、もう一方に偽物の薬(プラセボ)をのませました。その結果、偽物の薬をのんだグループの方が、鼻づまりや咳が軽く、ウイルスを周囲に感染させる期間も短かったのです。

解熱剤をのんだ方がいいケース

解熱剤で熱を強制的に下げてしまうと、病気の治りが遅くなることがあると書きましたが、
「発熱を解熱剤で抑えることはよくないことだから絶対にのんではいけない!」ということではなく、のんだ方がいいケースもあります。

それは、熱で子どもがぐったりとして元気がなく、食べものや水分をとれないようなケースです。

病原菌やウイルスとたたかうためには体力が必要です。
食べものや水分をとれないとどんどん体力が落ちていってしまうため、まずは解熱剤で熱を下げ、食事をとって体力をつけることが優先になります。

また、子ども自身が熱によるだるさや頭痛、吐き気などの症状を強く訴えた場合も、解熱剤によって熱を下げることでそれらの症状を軽くすることができるため、解熱剤をのんだ方がいいといえます。

子どもって熱がでてもびっくりするくらい元気なことが多いですよね。
そういうような場合は、解熱剤をのまず、子ども自身の免疫力で治した方がよいということですね。

解熱剤の種類と安全性

解熱剤として使われる薬には、アセトアミノフェン、アスピリン、ポンタールなどがありますが、このうちアセトアミノフェンが最も安全性が高いとされています。

アスピリンは、熱を下げる効果が高いため以前はよく使われていましたが、水ぼうそうの子どもにアスピリンを使うとライ症候群という重い脳症を引き起こす可能性があるということがわかりました。
その結果、アメリカで使用禁止になり、日本でも子どもにはほとんど使われなくなりました。

ポンタールも強力な解熱効果がありますが、子どもに対する安全性が確認されていません。
子どもや高齢者がインフルエンザにかかると、まれにインフルエンザ脳症という重い脳症を併発することがありますが、ポンタールなどの強力な解熱剤の使用がインフルエンザ脳症を引き起こしているのではないかとも考えられています。

そのため、子どもには強力な解熱剤を使用しないようにと国から呼びかけがあり、日本でポンタールを処方する機会はぐっと減りました。
ですが、法的に禁止されたわけではないため、今でも一部の医療機関では、子どもの発熱にポンタールを処方されているようです。

アセトアミノフェンは、現時点ではこういった副作用は報告されておらず、最も安全性が高いと考えられています。

ですので、「高熱がでていても薬で熱を下げる必要はないが、子どもがつらがっているときだけ、安全性の高いアセトアミノフェンを使うのがよい」と考えておくといいと思います。

ただし、安全性の高いとされるアセトアミノフェンでも、過剰に服用した際には副作用も報告されていますので、必ず用法・用量を守り、医師の指示に従って服用しましょう。

ちなみに、アセトアミノフェンはさまざまな商品名で販売されており、カロナール、ナパ、ピリナジンなどがあります。

解熱剤でひきつけは防げない

「でも解熱剤で熱を下げないと、ひきつけが起きないか心配で…」
という保護者の方も多いと思います。

ひきつけ(熱性けいれん)というのは発熱時に起きるけいれん発作で、突然白目をむいてからだをつっぱったり、手足をガクガク震わせたりします。
生後6か月ごろから6歳くらいまでにみられ、子ども100人のうち3~4人は経験するといわれるくらい珍しくない病気です。

子どもが突然白目をむいてガクガクけいれんするので、初めて見た保護者の方はとても驚いてしまうと思いますが、ほとんどの場合ひきつけは子どもにとって害はなく、後遺症も残らないといわれています。

ひきつけは発熱時に起こるので、「解熱剤で熱をさげたほうがいいのでは?」と思われるかもしれませんが、解熱剤はひきつけには効果がありません。

ひきつけは熱が急激に上がるときに起きやすく、いったん熱が上がりきってしまえば起きにくくなるといわれています。
そのため、熱が上がってから解熱剤をのんで熱をさげても、ひきつけの予防にはあまり意味がありません。
むしろ、解熱剤の効き目が切れて熱が再び上がるときにひきつけを起こす可能性がありますので、逆効果といえます。

ひきつけを予防するジアゼパム(商品名ダイアップ)という薬もありますが、そもそもひきつけは起きても特に問題がないといわれていますので、予防する必要もありません。
ひきつけ治療においてジアゼパムは、「ひきつけが起きないか心配…」という保護者の不安を和らげるための薬という位置づけのようです。

まとめ

  • 発熱は、体温をあげて病原菌やウイルスの力を弱めると同時に、からだの免疫の力を高めることで感染症を治すからだの治療メカニズムである。
  • 解熱剤で熱を強制的に下げてしまうことは、からだが本来もつ防御反応を妨げてしまうことになり、かえって病気を長引かせてしまうことがある。
  • 熱で子どもがぐったりとして元気がないときや、 頭痛や吐き気などでつらがっているときなどは、症状を和らげるため、医師の指示に従って解熱剤をのんでもよい。
  • 子どもが高熱をだすとひきつけ(熱性けいれん)を起こすことがあるが、解熱剤にはひきつけを防ぐ効果はない。

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