産後うつはなぜ起こる? ―お母さんの脳には孤独と不安を感じさせるしくみがある

妊娠・出産

こんにちは。めぐです♪

子育て世代が社会から孤立しやすい現代、子育てをしている方の中には「産後うつ」に苦しんだ経験をもつ方も多いのではないでしょうか?

かくいう私もその一人で、もともとの”うつになりやすい気質(うつ気質)”と子どもの夜泣きによる睡眠不足などがあいまって、出産後がっつりと産後うつになり、なかなかつらい時期を過ごしました。(治療を受け現在は完治しています)

私はもともと”うつ気質”をもっていることがわかっていたので、産後うつになることもなんとなく予想していましたが、周りをみると、普段はおおらかで細かいことは気にしない、一見うつとは無縁な性格の方でも出産後にうつ状態になっているお母さんもいます。

産後うつというのは本当に「母ならだれでもなりうる病気」なんだなと感じます。

この産後うつですが、「原因が出産前後の急激なホルモンバランスの変化だからしかたがない」とよく言われます。

ではなぜ、ホルモンバランスの変化が孤独や不安を引き起こし、お母さんをうつ状態にするのでしょうか?

その理由についてはまだわかっていないことが多く、語られることも少ないですが、最近読んだ本のなかでそれにまつわる興味深い知見がありましたのでご紹介します。

アフリカの先住民に残る”人間本来の子育て”

私たち人類の起源がいつか、というのは諸説ありますが、人類に最も近いとされるチンパンジーと人類が分かれたのは約700年前だろうといわれています。

そのころの人類はどのような子育てをしていたのでしょうか?―アフリカ・カメルーンのジャングルの奥地にすむ先住民族”バカ族*”には、今もなお太古の人間の子育て、つまり”人間本来の子育て”が受け継がれています。

*バカ族の「バカ」とは、彼らの言葉で”止まり木”という意味です。バカ族はジャングル内を自由に移動しながら暮らす狩猟採集民族であり、その暮らしぶりが止まり木を次から次へと移動する鳥のようであることから名づけられたということです。

バカ族の人たちは子だくさん!

バカ族の人たちは基本的に子だくさんで、村は子どもたちであふれています。

正確な出生率のデータは見つけられませんでしたが、子どもを産める年齢の女の人はほとんど毎年のペースで子どもを産むそうです。なかには11人の子どもをもつ”超”子だくさんお母さんもいます。

ところで、ゴリラやチンパンジーなどの類人猿では出産の間隔が比較的長く、遺伝学的に人間に最も近いとされるチンパンジーで5~6年とされています。

それに対し私たち人間の出産間隔は短く、生物学的には1年ごとに妊娠・出産することが可能です。

別の記事でも書きましたが、チンパンジーは人間と比べて子どもの離乳完了が4歳ごろと遅く、それまで子どもはお母さんからほとんど離れません。その間、お母さんはわが子にずっとつきっきりでお世話が必要となるため、出産の間隔が長いのではないかといわれています。

多くの子どもを産み育てることを可能にした”共同養育”

生物学的には毎年のように出産が可能となった人類ですが、いったいどうやってこれほど多くの子どもを育ててきたのでしょうか?

―その答えは、バカ族の子育ての特徴である”共同養育”です。

私たちの暮らす現代社会では、一般的に「子どもは、親が育てるもの」という認識が根強いと思いますが、バカ族の人たちは「村の子どもは、村のみんなで育てるもの」 と考えています。

バカ族では、母親が抱いたり、母親のそばにいる子どもは、おっぱいの必要な乳飲み子やまだハイハイをしている本当に小さな幼児だけです。

それ以外の子どもは母親のもとを離れ、子ども同士で固まって遊んだり、自由に歩き回ったりしています。泣いたときや危ないことをしそうなときは、母親に限らず近くにいる大人がそれとなく叱って止めたり、面倒を見たりします。

村の中では、自分の子・他人の子という区別はなく、大人なら誰の子でも世話をするというのが自然なこととして受け入れられています。なんと、食事や寝泊まりする場所も必ずしも親のもとというわけではないそうです。日本ではなかなか考えにくい状況ですよね。

このように、同じコミュニティのメンバーが協力しておこなう子育てが”共同養育です。

実はこれこそが、多くの子どもを産み育てるため、700万年前に私たちの祖先が獲得した子育て戦略であり、人間本来の子育ての形なのではないかと考えられています。

現代の日本に暮らす私たちの脳も、”共同養育”がベースになっている

私たち日本人をとりまく環境はこのわずか百年余りの間に劇的に変化しましたが、私たちの脳はその変化のスピードについていけず、今も700万年前の脳の性質を多く残しています。

それは子育てについても同じです。
”共同養育”で子どもを育てたいという本能と、それが難しい現代の育児環境のギャップが、産後うつの原因となる”子育て中の不安や孤独”の正体ではないかとされているのです。

私たちが子育て中に不安や孤独を感じると、誰かと一緒にいたい、誰かと一緒に子育てしたいという欲求が高まると思います。つまり、”共同養育”する仲間を見つけ、子どもを一緒に育てられるように、出産後の母親の脳は不安や孤独を感じやすくなっているのだと研究者たちは考えています。

まとめ

  • 人間は本来、コミュニティ全体で一緒に子どもを育てる”共同養育”による子育てを行ってきた。
  • 人間が短い間隔でたくさんの子どもを産み育てることができたのは”共同養育”のおかげであり、人間の脳は”共同養育”をもとめるように作られている。
  • 現代の日本では”共同養育”を行うのが難しい状況が多いが、私たちの体には”共同養育”をもとめる強い本能があるため、その本能と現実とのギャップにより、不安や孤独を強く感じる。

「子育てがつらい」という気持ちは、子育て中のお母さんであれば多かれ少なかれ抱いたことのある感情だと思います。私もそうでしたが、子育てをつらいと思うこと自体がなんだか母親失格な気がして、そんな気持ちを抱く自分自身を責め、誰にも言えずに一人で悩んでいるお母さんも多いのではないでしょうか。

でも、それは違います。子育てをつらいと思うのは、私たちの脳と現実の環境の間の大きなギャップが原因であり、決してお母さん個人のせいではないのです。

もし、産後うつに苦しんでいたあの頃の自分に会うことができたら、そう言って、すぐに周りに助けを求めるように教えてあげたいと今は思います。

そしてこれからの社会が、そんなお母さんの気持ちを理解し、寄り添い、助け合えるような社会になっていくことを、心から願っています。

今日の参考図書

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<そのほか参考文献>
京都大学大学院理学研究科 生物科学専攻 動物学系 人類進化論研究室 『チンパンジーの成長と発達





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